停留所で一休み
「……私、ついて行ってもいい?」


何よ。

人が飲み過ぎて、吐きそうだっていうのに。

ちらっとそのカップルを見ると、心臓が飛び上がるほどに驚いた。

男の方は、あの本村敬太で、女の子は大学を卒業したぐらいの若い子だ。

何だ、あいつ。

そう言ってくれる子がいたんじゃん。


「ごめん。そう言うのって重い……」

本村君がそう言った途端、女の子は持っていたカバンで、思いっきりあいつを叩いた。

思わず目をつぶる私。

女の子はそのままあいつを置いて、どこかへ走り去ってしまった。

「痛ってぇ……」

腕を押さえるあいつを見ながら、私はどうかこっちだけは見ないでと祈る。

あいつは手をポケットに入れた。
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