停留所で一休み
「そういえば、この間の有給の話、考えたか?」

「えっ?」


こんな時に有給の話?

会社を辞めるって言ってるんだから関係ないでしょ。

それなのに部長は、呑気に笑顔を見せている。


「一応は……」

本当は、全く考えていないけれど。

「そうか!じゃあ早速、明日から行って来い!」

「明日から?」

「引き継ぎは、それからにしよう。」

自分の面倒を見てくれた上司からそう言われると、こっちとしては反論もできない。

「はあ……」

仕方なく出海は、返事をした。

「これは、帰ってくるまで預かっておくな。」

部長は私の退職届に、ようやく手を伸ばすと、中身を見ることなく、引きだしの中に入れてしまった。
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