停留所で一休み
叔母さんの家を出てから、しばらく歩いて、誰かが追いかけてきている事に気づいた。

「小形。」

知っている。

本村君が、小走りで追いかけてきているのだ。

「待てって、小形。」

それでも私は、振り向かない。

「小形出海!!」

すると突然、本村君に腕を掴まれた。

「待てって言ったの、聞こえなかったのか?」

本村君は、軽く息切れをしている。


「……聞こえなかった。」

本当は嫌なくらいに聞こえていた。

「相変わらずだな。」

彼は額の汗を拭って、私の隣に来た。

「この先に堤防があるから、そこまで歩こうぜ。」

そう言って本村君はカバンを振り上げて、背中に乗せると、ゆっくりと歩き始めた。

「うん…」
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