停留所で一休み
私が返事をすると、本村君はクルッと振り向いた。

「おまえ、大丈夫か?」

「え?」

「まさか、昼間から目、開けたまま寝てないよな。」

そう言って本村君は、私に顔を近づけてきた。

「当たり前でしょう!!」


私は怒りながら、本村君を追い越した。

「何怒ってるんだよ!!」

彼の言葉に、私はピタッと歩みを止めた。

「花の色は、」

「はい?」

「移りにけりな いたずらに。」

本村君は、ぽか~んと口を開けている。

「小野小町。私今、そういう気持ちなの!!」

また歩き出す私に、本村君は呟いた。


「そういう花がいいって言う男だっているって。」

そのセリフを、私は聞き逃さなかった。
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