停留所で一休み
「何やってんだ、おまえ。」

本村君は私から名刺を奪うと、名刺入れにそれを押し込んだ。


明らかに男性の字。

「本村君、引き抜きの話でも来てんの?」

私は率直に聞いた。

「名刺に、連絡先が書いてあった。それって、その気になったらいつでも、連絡してって事でしょ?」

本村君はフッと、鼻で笑った。

「すごいな。小形って、そこまで分かっちゃうんだ。」

「私の周りにも、他の会社から引き抜かれた人が、何人かいたから。」

「そうか。」

否定しないって事は、やっぱりそうなんだ。

でも、なんだか嫌な感じ。


「私、引き抜きって嫌い。愛社精神とかなくて、お金で動く人みたいで……」
< 95 / 224 >

この作品をシェア

pagetop