クリスマスケーキは仲直りのキスのあとで。【短】
「いや。俺は本当、生クリーム好きじゃねぇ」
「いいから黙って食え!」
「わっ!おまっ…無理矢理……っ」
私が無理矢理口に押し込んだケーキを、顔をしかめながら咀嚼し、ゴクンと飲み込む比呂。
「ん?」
それから、不思議そうに黒目を斜め上へ。
「意外に……いける」
「でしょ!?」
生クリームのケーキの美味しさを比呂と分かち合えたことが嬉しくて、つい満面の笑みを浮かべてしまった。
そうだ。
そういえば、私もそうだった。
去年、比呂に押し切られ食べたチョコレートケーキは、意外なことにすっごく美味しかった。
比呂と出逢わなきゃ、比呂と一緒にいなきゃ、きっとずっと知らなかったこと。
そっか。
ナナが言ってたのはこういうことだったんだ。
私達は、全く違う者同士だからこそ新しい発見がある。
お互いの好きなものを分け合って、また新しい好きなものが増える。
似たもの同士なら、分かち合うことはできても、足りないものを補い合うことはできないでしょ?
そう思うと私達って、案外最強のカップルじゃない?
テレビからまたクリスマスソングが流れ出す。
クリスマスソングにクリスマスケーキ。
そして、比呂。
うん。
悪くない。
「クリスマスケーキ、もっと食べようよ!私、お腹すいちゃった!」
そう言って、もう一度ケーキをすくおうとしたら。