【短】君がくれた出逢い
「花奈ちゃん、よかったの?」
「なにが?」
「部活だよ、部活」
「わたしが決めたこと。あそこにいたら辛いことを思い出すだけ」
花奈は部活を辞めた。
ジャックの最期を看取れなかったことは今でも傷として残っている。とても、あの場所ではやっていけないと思ったのだ。
「ここにきて、新しいことを始めるなんて強いな。花奈ちゃんは」
「ジャックのお陰よ」
「なんか妬けるな」
「なに、それ」
咲也の顔がみるみる赤くなっていく。顔を見られないように背く咲也に、なぜか自分も熱くなる。
真っ直ぐに目を見られなかった。
「一目惚れ。だけど、ずっと勇気なかったから」
言葉を選びながら話す咲也。花奈は黙って聞いていた。
「……ずっと好きだった」
咲也の言葉を聞いてはいたが、花奈は立ち止まらない。
肩を落とした様子の咲也が再び横に並ぶ。