三日月と狼

プラトニックな関係は半年経っても変わらなかった。

花澄の想いはますます加速してケイに向かっているが、ケイには全くと言っていいほど気付かれていない様だ。

もしかしたら気がついているのかもしれないが
ケイはそれに気付かないフリをしてるのかも知れなかった。

そして花澄はまだ不妊であるという話を将輝に言えないままだった。

将輝も子供が出来ないことに少しずつ焦っているようで
最近はその話題が以前よりカナリ多くなった。

「花澄…そろそろ真剣に不妊治療始めてみないか？

俺も協力するし…」

それが引き金だった。

もう限界だと感じ、
花澄はとうとうその次の日、荷物をまとめて家を出た。

手紙に不妊であると診断された事を書いていきなり姿を消したのだ。

伝え方も花澄のとった行動も最悪だった。

残された将輝は必死で花澄を探した。

初めは実家に帰ろうと思ったが、
それでは将輝にすぐ見つかってしまう。

その時ちょうどケイから連絡がきた。

「今からウチに来ませんか？」

花澄はその足でケイの住む家に向かった。

ケイは大きな荷物を見て

「え？旅行でも行くんですか？」

と聞いた。

しかしたまたま家にいたヒロが花澄の様子がおかしいのに気が付いた。

「もしかして家出たんですか？」

花澄が頷くとケイは驚いて
花澄の話を聞いてくれた。

ヒロも一緒にそこに居て、
花澄の自分勝手さに呆れたが、
ケイはなぜか花澄の味方だった。

「じゃあウチに置いてあげたら？ね、ヒロさん。」

とヒロに言った。

ヒロは花澄の顔色を伺いながら言った。

「でも男ばかりの家で暮らすというのは…
色々まずいでしょう？

旦那さんのところに戻れなくなるかもしれないし…」

それでも花澄はヒロにお願いした。

「もう、戻るつもりはありません。」

「そ、そうなんだ。」

ヒロはかなりビックリしていたが
行く場所のない花澄を追い返すことは出来ず、
空いてる部屋を使っていいと言ってくれた。

そして花澄とケイとヒロの奇妙な同居生活が始まった。