三日月と狼
「ただいま。」

ケイは二人一緒に帰ってきたのを見て

「一緒だったの?」

と少し驚いた。

「ああ。ラーメン食べに出て…花澄ちゃんがちょうど仕事終わる時間だったから誘ってみたんだ。」

花澄は少しバツが悪そうで
ヒロは自分の気持ちを隠すように言い訳した。

「深夜のラーメンなんて花澄さん、太りますよ。」

「え?あー、でも美味しかったよ。

ケイくんは食べた事ない?あそこの屋台のラーメン?」

ケイは首を横に振った。

「ケイはね、夜に物食べないんだよ。
スタイル保たないといけないから。」

「そうなんだ?

それってどんな仕事なの?」

ケイが何の仕事をしてるかは花澄にとって未だに謎だった。

「ケイは今ね、モデルの仕事してるから。」

「モデル?」

たしかにケイの容姿ならそういう仕事に就いていてもおかしくない。

「俺の知り合いのフォトグラファーがケイのことエラく気に入っててね。」

「え?もしかして女の人?」

花澄は自分の気持ちが抑えられず
少し焦ったように聞いた。

「いや、男。」

花澄がホッとしたような顔をして
ヒロの胸が苦しくなった。

「どっちにしろ僕はラーメンがあんまり好きじゃないですしね。

ヒロさん、一緒に食べてくれる人が出来て良かったですね。」

花澄は花澄でケイがそんなことを言うたびに傷ついている。

ケイはそんな事には気づかないふりで
DVDの続きを観ている。

花澄はため息をついてリビングをあとにした。

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