三日月と狼
花澄はケイと映画館に隣接されたカフェで
映画の話をした。

今日観た映画の感想から始まり
一番好きな映画や、一番悲しかった映画が何だったかなど時間を忘れ、延々と話をした。

ケイと映画の趣味がものすごく近くて
花澄は感動した。

それはケイも同じだった。

「なんか同じ感性の人と話すと楽しいですね?

えっと…お名前聞いてもいいですか?

何て呼んだらいいか…」

「あ、花澄です。」

「カスミさん?ステキな名前ですね。

僕の事はケイって呼んでください。」

もしかしたらこのままこの男とホテルに行ったりするんだろうか?

なんて花澄はふしだらな事を考えた。

花澄だって体温も測らず、
感情の赴くままに抱かれてみたい時がある。

女にだってちゃんと性的な欲求はある。

夫のいる身でそれはいけない事だけど
今の花澄はあまりに情緒不安定で
何かに逃げたかった。

それが不倫でも火遊びでもいい。

悪い事をして、夫との関係が冷え切れば
花澄にはこの重圧から逃れられる気がした。

時間は過ぎて、目の前のカップの飲み物が無くなってしまった。

さすがにそろそろ帰らないと夫が帰って来てしまう。

「じゃあ、出ましょうか?」

と花澄が言うと、ケイは頷いて

「楽しかったです。

またお話しできるといいですね。

もしよかったら連絡先とか聞いても…?」

このままこれで別れるなんて拍子抜けしたが
連絡先を渡せば、次があるかもしれない。

「じゃあ、SNSで繋がりましょう。

トークルームを作って、たまに映画の話をしましょう。」

そして2人は帰るべき場所に帰っていった。



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