キンヨウビノヒミツ+彼女が忘れた金曜日+
電話を切ると、いつの間にか事務室に来ていた井上が事務室のパソコンの電源を入れて回っていた。

「井上、四葉からレゾルシンの発注来ると思うんだけど、それだけ納品書すぐに出してもらってもいい?」

「はーい。倉庫行ってていいよ。届けに行くから」 

「よろしく」

 倉庫に向かう途中、丁度出勤してきた所長に呼び止められた。

「前橋君、良い所にいた。ちょっといいかな」

「はい?」

 所長室についていくと、おもむろに告げられた。

「前橋君、来月から青森営業所に行ってもらいたいんだけど」

「来月、ですか?」

 所長の背後にかかっているカレンダーに視線を向ける。今月はもう初旬が終わりつつある。あと3週間無い位?

「そう、来月から。急で悪いんだけど。そのかわり、昇進はするから」

「え?昇進するなら、栄さんの方が先かと……」

 俺、昇進すると栄さんより上になっちゃうんだけど? と頭をよぎる。

「栄君? んー、まぁ。栄君には栄君のペースがあるから」

 ……栄さんには、栄さんのペース、か。
 つうか、青森って。青森って遠いじゃん。車で行ったことないけど、ここからノンストップでぶっ飛ばしても4時間位かかるんじゃないの? 遠いだろ。

3週間弱で青森まで引っ越しって……家探しまで含めたら何気にハードだな。
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