キンヨウビノヒミツ+彼女が忘れた金曜日+
---

「ご馳走様でした」

 目の前には、空になった皿。俺は井上の作ってくれたボロネーゼをあっさりと平らげた。

「わー、すごい。作りすぎたかなって思ったのにあっという間に無くなった」

「まだ食えるよ」

「え、ほんと? 意外と食べるんだね」

 多分そこまで大食いでは無いはずだ。だけど、納品する物に重たいものが多いから、意外と力仕事の割合が多くて腹が減る。

「足りた? なにかもっと作る?」

「いや、足りたよ。美味しかった」

 目が合った井上は、微かに頬を染めた。そして、「それなら良かった」と言うと、立ち上がって食器の片付けをはじめた。

 井上が洗ってくれた食器を拭きながら、相変わらず美味しそうな彼女の首筋を眺める。

 今、井上が手にしているフライパンで洗い物は終了。

 これからどうする? と思案する。
< 29 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop