キンヨウビノヒミツ+彼女が忘れた金曜日+
なんとも言えない居心地の悪さに、そう言い残してリビングに逃げるように戻った俺は、ため息をついた。
急がなくてもいいって……俺、何言ってんの。
急いでるよ。めっちゃ急いでる。
余裕無いのは格好悪いけれど、余裕なんて全く無いのに。
先週からおあずけ喰らってるし、あと2週間で転勤だと思うと悠長に構えてる暇だってない。
何よりも、先週の答えと今の答えが同じだって保証なんてない。
先週はあっさり進んだし、話していて嫌われているとかそんな気配は感じないから、何となく大丈夫なんだろうと思っていた。
酒を飲んでから話して、また井上に忘れられたら嫌なのは確かだけど、ちゃんと考えられるからこそ、断られる可能性だってあることを忘れていた。
実際、俺自身だって”同僚”だからずっと対象外にしていたんだから。
井上にとって、同僚が対象外なら……?
いっそ先週既成事実でも突きつけた方が良かったのか?
つうか、そもそもなんで忘れんだよ。
色々な事を逡巡していると、キッチンから戻ってきた井上が、俺の隣にぺたんと座った。