キンヨウビノヒミツ+彼女が忘れた金曜日+
「え、あ、えーと……」
答えにも詰まれば、完全に目が泳いでいる井上に小さくため息が漏れた。
「多分、勘違いしてるぞ」
何言ってんの? と言いたげな視線にこっちこそ「何言ってんの?」と言いたくなる。
「なんもしてないからな」
「ほんと、に?」
ほんとにって。本当も何も、何する暇もなく井上寝てたじゃん。
「本当に。あそこに入ったのも不可抗力というか……。つーか、覚えてないわけ?」
朝からずっと疑問だった。確かに井上は少なからず酔って居た。酔ってはいたけれど、意識が無いなんて様子は全くなかったし、ちょっと仕事中とは違ったけれど会話だって普通に成り立っていた。覚えてないなんて方がおかしい位しっかりしていたはずなのに。
「……覚えて……ない」
「マジで?」
本気で覚えてないワケ? 信じられないと言う方が本音だけれど、井上の表情を見る限り、本当に覚えていないのだろう。
「……ごめんなさい」