あり得ない男と、あり得ない結末
体も髪もしっかり洗ってお酒臭さも洗い流すとすっきりしてきた。
お化粧を落とすとどうして気が抜けてくるんだろう。
なんか頑張る気力みたいなのもスーッと抜けていっちゃう。

まずは内風呂に入って、全面窓から外を眺める。
おばさまたちは、全く気にもしていないように、快晴の空のもと露天風呂の岩に座りながら朗らかに話している。

明るい時間帯の露天風呂って、なんだか落ち着かないような気もするけど……。

しかし、昨晩からのイレギュラーに続くイレギュラーで、なんだかいろいろ面倒になってきていた。

まあ、いいや。
知り合いがいるわけでもないし。

前をタオルで隠しながら外に出ると、日差しとさわやかな風が一気に感じられた。
少し寒いくらいだったけど、お湯につかれば逆に肌を撫でていく風は気持ちが良くて。
明るい温泉ってこんな感じなんだ。へぇ、知らなかった。

「気持ちがいいわねぇ」

白髪の女性に声をかけられ、「そうですね」と答える。
道ですれ違うだけなら、たぶん、言葉を交わすことなどない人たち。

「おひとり?」

「いいえ。友人と」

阿賀野さんは友人扱いでいいのかしらとも思ったけど、同期でもないし恋人でもないし。他に適当な言葉も思いつかない。

女性は周りをきょろきょろしたかと思うと、急に含み笑いをし、「そう。楽しんでね」と笑った。
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