あり得ない男と、あり得ない結末

「美麗さん、今の部署どうですか?」

「え?」

仲道さんから声をかけられて我に返る。派遣で一年間働いた仲道百花さんは、今や馬場主任の恋人だ。

馬場主任。金髪と彫の深い顔で、外国人の血を濃く継いでいるのがわかるけれど、中身は控えめでとても日本的な人だ。私は入社したときは秘書課にいたから接点なんてなかったけれど、その目立つ容姿が気になって見つめているうちに、私は彼に恋をしてしまった。
それは叶わなかったわけだけど、悔しいけれど仕方ないと思えたのは、この子が猪突猛進でどうしようもなく手がかかって、……だけどすごくいい子だったからだ。

今私は、異動して第一営業部にいる。そこに、父が一番最初に私の結婚相手にと考えていた片桐(かたぎり)さんがいるから。
最初に、父から片桐さんのことをどう思うかと聞かれた時に、私は今は好きな人がいると伝えた。
それが馬場主任だと知った父は、私を土地開発部門にねじ込み、主任にも結婚の打診をしてくれたのだ。まあ、結果は彼に振られてしまったのだけど。

父はこういうところがある。
私に強要するだけではなく、ある程度の範囲は私の意思を通してくれるのだ。
だからこそ、私も父を無碍にはできない。

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