あり得ない男と、あり得ない結末
そんなわけで、金曜の仕事終わり、私たちはお付き合いをしてから初めてのデートをすることにした。
会社での阿賀野さんはいつもと変わらずスキンシップ過多な感じなのに、いざふたりきりで待ち合わせした後は、肩を抱くでもなく普通に歩いていく。
好きだと自覚はしたものの、この人のことはまだまだ分からないことの方が多い。
「ところで阿賀野さんはどうしてうちの会社に入ったんですか?」
食事を取りつつそんな話を振ってみる。
「どうしてって?」
「だって。二十二歳で卒業して入社が二十四歳でしょう? 二年もふらふらしていたのに、急に会社勤めする気になったのはどうしてなんですか?」
そして今のところ四年間勤め続けているわけだし。一か所で仕事しているのが性に合わないってわけではないのよね。
「あー」
ストローを口にくわえたまま、考え出す彼。ちょっとお行儀が悪い。
「なんでだろな。強いて言えば行きたいところはもう巡って来たし。だったら次は留まってできることをやってみたかったんだよな。不動産業って言ってみれば場所を作り替える仕事だろ? ある人にとって不必要なものになったものを、リノベーションや建て替えを進めて必要なものに変える。ちょっと面白くない?って思ったんだよな」