あり得ない男と、あり得ない結末
「で、やってみてどうだったんです?」
「なんだよ面接官みたいだな。……結構おもしろいよ。まあ、社員は頭固いのも多いけど、中には本部長とかみたいな融通きく人もいるしな。頭固いだけって思ってたやつも、話してみりゃおもしろかったりするし」
手を伸ばして鼻をツンとつつかれる。
「誰のことですか」
「俺の目の前ですましてるやつー」
あ、ずるい。その笑顔。
無茶苦茶ときめいてしまうやつ。
恋をして……というか、一度気になりだすと相手のふとした表情で簡単にときめいてしまって困る。
そして見ていると、意外なことにも気づくものだ。
「ところでさ。今度、うちの部署でシェアオフィスの開発するんだけどさ」
阿賀野さんは案外仕事好きだ。プライベートの時間も仕事の話の割合の方が多い。
夢中になりだすと瞳を輝かせて、食事をする手も止まっちゃう。そんな時は、夢見がちな少年みたいで、少しばかり可愛い。
そして何より意外だったのは。
「うん。それはわかりましたが阿賀野さん。二度目のキスはいつですか?」
「はっ? ……な、なんだよ、いきなり」
「だって、後でって言ったのに、もう一週間もたってますけど」
あんなにへらへらしているのに、実は押されるのにはものすごく弱そうなのだ。
こっちから迫っていくと、すぐに顔を染めて誤魔化そうとする。
自分から来るのは平気みたいなのに、変なの。