あり得ない男と、あり得ない結末


目が覚めたとき、自分のいる場所がわからなかった。
十畳くらいの絨毯敷きの部屋に敷かれた布団。私はそれに包まれてとても暖かかったのだけど。
ただ驚いたのは、阿賀野さんが目の前にいたこと。

慌てて起き上がり、二日酔いの頭痛に打ちのめされつつ部屋を見回すと、そこにいたのは阿賀野さんだけではなかった。瀬川さんもいる。私を含めて全員服は着たままだ。上着だけが脱がされて、だらしなく床に転がっている。

布団は二枚しかなくて、なぜか私と阿賀野さんが一緒で、もう一枚を瀬川さんがひとりで使っている。

「うーん。寒い」

もぞもぞと寝ぼけながら引き寄せられ、抵抗したものの力負けして阿賀野さんの腕の中に閉じ込められる。

いやいや、寒いじゃないのよ。こっちが身震いするわ。

「何すんですかぁ!」

「いてぇっ」

阿賀野さんの顎めがけて、頭突きをした。
痛いでしょうとも、私も痛いです。
しかしながら彼の手が緩んだので、慌てて腕の中から抜け出す。
一体何の罠なの、これは。

「顎がっ……顎が」

半覚醒の阿賀野さんが騒いでいるので、離れたところで寝ている瀬川くんも目を覚ましたようだ。

「……おはよう、田中さん」

「おはようございます」

いつも落ち着いたメガネ男子が、メガネ外してボケっとしてるのはなかなかにギャップ萌えするけれど、今はそういう話じゃない。

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