あり得ない男と、あり得ない結末
「瀬川さん、私、昨晩の途中から記憶がないんですけど、この状況は一体どういうことです?」
「ああ、まずここがどこかわかる?」
「ここ……?」
きょろきょろと見回して、見覚えがあるカーテンの柄に目を奪われる。
「……城治さんのマンション?」
城治さんと私は従兄妹だ。彼がこのマンションに移ったときにお祝いに来て内見させてもらったことがある。
「そう。昨日さ、田中さん酔いつぶれちゃったんだよ。で、田中本部長が『近くだし俺のマンションに連れて行くから手伝え』って言って」
「瀬川さんと阿賀野さんが運んでくれたんですね? それはありがとうございます。……なんですが、どうしてあなたと阿賀野さんは今ここにいるんです?」
「帰ろうとしたら、まだ時間も早いから飲みなおすぞって本部長に誘われたんだよね。んで、リビングで奥さん交えて飲んでたんだけど、いつの間にか阿賀野がいなくなってて。探しに来たら阿賀野がここの床で雑魚寝してたからさ。さすがに男女二人を同じ部屋に置いて行くわけにいかないから、阿賀野には毛布を掛けて、俺も泊めてもらうことになったわけ」
「……だったら私を起こしてくれたらよかったのに」
最初の飲み会は、身重の千春さんを考慮して設定時間が早かった。それに久しぶりに千春さんに会えたから、嬉しくて飲みすぎてしまった。
彼女がいるとつい安心してしまって。
「俺も眠かったし、本部長も泊っていいっていうしさ。ごめん。でも何にもなかったのは証明できるよ。阿賀野がそっちの布団に入っちゃったのは多分無意識の行動だろうし」
「無意識ねぇ」
「そうだぞ。だから専務に言いつけるなよ!」
ようやく覚醒した阿賀野さんが反論し始めた。言いつけるって小学生かしら。発想が子供だわ。年上のくせに。