碧い瞳のシャイ
白い砂丘の旅人
なんにも無い
白い砂丘の真ん中で
白い猫が
立って二足で歩いてる
人間みたいに…
ペタッとした白い毛
小さな頭
小さな頭の真ん中に
碧い瞳とピンクの鼻
ピンクの鼻と
シュッとした
三角の耳をピクピクさせて
シュッとした
細い尻尾を股に挟み
自信なさげに
まさに猫背で歩いてる
なんにも無い
白い砂丘の真ん中で
白い猫は旅人と出会う
旅人は尋ねた
「こんな所で何してるの?」
白い猫は答える
「自分を探してるの」
旅人はまた尋ねた
「それでどこへ行くの?」
白い猫はまた答える
「わかんない」
「君、名前は?」
「わかんない」
旅人は思った
『記憶が無いのかな』
白い猫は答えた
「あるけど名前は無いの」
旅人は驚いた
「君、心が読めるのかい」
「聞こえるだけだよ」
旅人は思い付く
「僕が名前、付けてあげようか」
白い猫は喜び答える
「うん!」
旅人はじっと見つめて決めた
「シャ…イ、君はシャイだ!」
「シャ…イ、ぼくはシャイ…ありがとう!」
白い猫は嬉しそうに
可愛らしい肉球の足跡を残して
なんにも無い白い空と
なんにも無い白い砂丘の狭間に消えていった…
足跡を見つめながら
旅人は思い返していた
なんにも無い白い空と砂丘
そして白い猫シャイ
自らの名を口にして
自信ありげに空を見上げた時
碧い瞳が反射した
右はアクアマリン
左はルビー色に彩られた美しい瞳が
確かにそこに存在していた…