オオカミ社長は弁当売りの赤ずきんが可愛すぎて食べられない
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私は携帯を握り締めたまま、ずるずると地面にしゃがみ込んだ。
昨日の一件で、私は女性からの捨て台詞に、憤りを隠せなかった。
だけど今ならば思う。それがただの捨て台詞であったなら、どんなにかよかっただろう。
女性はしきりに自分の、いや女性は「パパ」と言っていたか。「パパ」の威光を振りかざしていた。
けれど私は、仮に女性が力を持っていたとしても、たかだか弁当屋のトラブルで、本気で行動に移るなど想像もしていなかった。
それがこんな結果を招くなら、地面に頭を擦りつけて謝ればよかった。私が無駄な正義感を振りかざして、正面から対峙して、その結果がこれだ……。
「……私、一体なにをやっているんだろう。私があの時、下手に出て謝って、……そうすれば葉月の入学金や学費が払えた。一郎たちにも新しい体操着が買ってやれた。私、ほんと馬鹿だ」
正論や正義を振りかざす事が、必ずしも最善とは限らない。
少なくともあの時、私が取るべき最善はあれじゃなかった。私の想像力が、足りなかったのだ……。
「うっ、うぅぅうっっ……」
泣いている場合じゃない。そんなのは分かっていた。
泣いている暇があれば、四月からの就職先を探すべき。だけどアルバイトの解雇に続いてもたらされた、内定取り消しの連絡は、あまりにもダメージが大きかった。
私はしゃがんだ膝に顔を埋め、肩を震わせて泣いた。