オオカミ社長は弁当売りの赤ずきんが可愛すぎて食べられない
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新入社員研修の初日、俺は新入社員が集うミーティングルームを、廊下から覗いていた。
月子は通常の採用活動に参加しておらず、同期入社の面々とは面識がない。ちなみに経営企画室でのアルバイトも月子だけの特別措置で、他の内定者の中にアルバイトをしていた者はいない。
そんな月子の状況を憂いて覗きに行ったわけだが、ミーティングルームの中で、月子は他の同期らと和気あいあいと楽しそうに笑っていた。
どうやら心配は、杞憂だったらしい。月子はそのコミュニケーション能力の高さで、あっという間に同期たちと円満な関係を構築してしまった。
心配して様子を覗きに行った俺は、ホッと安堵の息を吐く。そうして改めて認識した月子の能力に、内心で舌を巻いた。
俺はそのまましばらく、月子から目が離せずに、ミーティングルームを覗いていた。
月子が、声をかけてきた男性の同期社員に微笑む。すると月子に笑みを向けられて、男は目に見えて頬を赤くした。
……おのれ、俺の月子にデレデレと鼻の下を伸ばすなど言語道断!
俺は男の胸のネームプレートに目を凝らす。しかし、如何せん距離があり過ぎるのと、ネームプレートの角度が合わない。
見えんな。
俺は男の名前を知る事を諦めた。
……ふん、名前が見えたなら僻地に送ってやろうと思っていたが、運のいい男だ。
そうして最後に、月子の柔らかな笑みを目に焼き付けて、俺はミーティングルームを後にした。