オオカミ社長は弁当売りの赤ずきんが可愛すぎて食べられない

12

「「三郎、一人だけズルいぞー!!」」
 するとここで、車外にいる他の少年から、一人乗車する三郎に対して不満が叫ばれた。
「一郎、次郎、このお兄さんが車で皆をスーパーに乗せて行ってくれるって!」
 すると三郎が、俺に対峙していたのとは一転し、子供らしい無邪気な笑みで、車外の少年らに向かって声を張った。
「「え、ほんと!?」」
 ……ふむ。三郎は、なかなか食えないな。しかしその分、見どころがあって面白い。
「あぁ、本当だ。さぁ、一郎君と次郎君も後部座席に乗ってくれ」
 俺も車外の少年らに向かって乗車を促す。
「うわぁ! お邪魔しまーす! って、シートふかふかじゃん!」
「お願いしまーす! わぁー! 中って想像よりも広いんだ!」
 そうすれば一郎と次郎は、我先にと転がるように乗り込んで、思い思いの感想を口にする。
 好奇心が全面の無邪気な様子を目にすれば、自然と頬が緩む。
 月子の弟なら俺の弟も同然で、実際にそう遠くない将来、三人の少年は俺の義弟になる。
 しかしそれを抜きにしても、俺は三郎の大人びた言動も、一郎と次郎の子供らしい率直さも、どちらも好ましいと感じていた。
「って、ちょっと待って下さい! 明彦さん、そこまで気を遣っていただかなくていいんです! ほら、一郎も次郎も三郎も、皆下りて! スーパーはねーちゃんと歩いていこう!? 明彦さんのご迷惑になるから!」
 ところがここで、狼狽した様子の月子が、すっかりスーパーに向かう準備も万端になっている俺達に待ったをかけた。
「えー!? なんでだよ?」
「そうだよねーちゃん、お兄さんが乗せてってくれるって言ってるんだから、いいじゃんか」
 子供らが口々に、反論の声を上げる。
 それに月子は眉をハの字に下げて、更に言い募ろうと薄く口を開いた。
「月子、迷惑などではない。ちょうど俺がスーパーに行く用事があったんだ。だから月子も夕飯の買い物があるようなら、ついでに乗って行かないか?」
 しかし月子よりも一足先に、俺が自分の買い物のついでを強調して伝えれば、月子は二の句を奪われた様子で、困惑も露わに俺を見つめた。
「「「だってさ、ねーちゃん!」」」
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