オオカミ社長は弁当売りの赤ずきんが可愛すぎて食べられない
13
バタン、バタン、バタン――!
……なんだ?
ここで、三つ子が動いた。三人は一斉に車を下りると、連携した動きで月子を後部座席にトンッと押し入れ、真ん中に座らせる。
「きゃっ!?」
そのまま月子を挟むように、一郎と次郎が元通りの配置で左右から座る。三郎は助手席に戻った。
バタン、バタン、バタン――!
そうして三人は、何事もなかったかのように扉を閉めた。
俺は運転席で一人、三つ子の息の合った見事な連携プレーに感嘆のため息を吐いていた。
「よし、それじゃあ出発だ。全員、シートベルトを締めてくれ」
「「「はーい!」」」
そしてこの上は、早々に出発してしまうに限る。俺は面々のシートベルトの装着を確認すると、ゆっくりと車を発進させた。
「明彦さん……、弟達がご無理言ってすみません」
月子が肩を小さく縮め、消え入りそうな声で言った。
「さっきも言ったように俺がスーパーに行くついでなんだ。だから無理も何もないぞ」
「「「そうだぞねーちゃん」」」
こうして俺は子供らの援護射撃を受け、月子と共にスーパーに繰り出す事になった。
……月子と買い物デート。ふむ、悪くないな!
「……お兄さん。全然、デートじゃないけどね?」
なっ!? 助手席から聞こえてきた、ともすれば聞き逃してしまいそうな小さな呟きに、ギョッと目を剥いた。しかも驚くべき事に、それは的確に俺の脳内妄想を捉えていた。
バクバクと騒ぐ鼓動を抑え、チラリとミラー越しに後部座席を確認すれば、一郎と次郎はキョロキョロと車窓から移ろう景色を眺めたりと忙しそうにしている。月子はそんな弟達の落ち着かない様子をハラハラと見つめていた。……どうやら、俺以外に三郎の呟きを聞き留めた者はいないようだった。
……ふむ、やはり三郎は侮れん。
俺も後部座席の面々に倣い、何も聞かなかった体をつき通した。
しかし内心では、助手席で涼しい横顔を晒す三郎に、舌を巻かずにはいられなかった。