オオカミ社長は弁当売りの赤ずきんが可愛すぎて食べられない
6
「明彦さん、一体何を飲んでるんですか?」
「つぶつぶコーンスープだ」
返ってきた答えは、私にとって僅かばかり予想外のものだった。
……そ、そうか。
コーヒーやお茶ばかりじゃなく、自販機にはそんな伏兵が潜んでいたのか。
「俺は月子の弁当屋で豚汁の美味さを知ってから、汁物にハマっている。だから自販機では、もっぱらスープ系だ。しかもこれはコーン粒がたっぷり入っていてなかなか食感がいい。……そうだ! 月子も飲んでみるといい!?」
「明彦さん、待って下さい」
私は、腰を浮かせかけた明彦さんの腕を慌てて取り、購入に待ったを掛ける。
「とても一本は飲み切れませんから、一口で十分です。あ、よかったら私のアイスと交換しましょう!? これもチョコレートの食感がパリパリで、とっても美味しいですよ?」
「交換?」
「はい」
明彦さんの声が僅かに上擦っているような気がしたけれど、私はいつも三つ子や葉月と交換する時と同じように、食べかけのアイスバーの持ち手側を明彦さんに向けて差し出した。
「落とさないように、ここ、ちゃんと持ってくださいね?」
「うむ!」
やけに気合の入った返事と共に、明彦さんがしっかりと持ち手を取ったのを確認して、私は代わりに明彦さんのコーンスープを受け取る。
「それじゃ、代わりにコーンスープをいただきますね」
「う、うむ」
私はさっそく、弟達と交換する時と同じように、受け取ったコーンスープを吸い口から飲んだ。
そんな私を、明彦さんが横から、とても強い眼差しで見つめていた。
「あ、本当ですね。コーンがたっぷりで美味しいです!」
「そうか」
明彦さんも、神妙な面持ちで手にしたアイスバーにゆっくりと噛り付く。
ふふっ。そんなに警戒しなくても、とっても美味しいのに。
私は微笑ましい思いで明彦さんを見つめていた。
「……まるで蕩けるようだな」
明彦さんは長く口内で味わった後で、感嘆したように呟いた。
「はい。本当に、チョコもアイスも口どけがよくって」
私の相槌に、明彦さんは曖昧に微笑んだ。
そうして私と明彦さんは、途中でもう一度スープとアイスを交換して完食した。
「美味しかったですね」
「あぁ、美味かった」
ノー残業デーの今日は、終業時刻を過ぎて休憩室を利用する社員がいない。
広いブースは、ずっと私と明彦さんの二人きりだ。美味しいアイスとスープを手に明彦さんと肩を寄せ合っていれば、ここが退勤後の社内である事を忘れてしまいそうだ。
それくらい、私と明彦さんの間には穏やかな時間が流れていた。
「つぶつぶコーンスープだ」
返ってきた答えは、私にとって僅かばかり予想外のものだった。
……そ、そうか。
コーヒーやお茶ばかりじゃなく、自販機にはそんな伏兵が潜んでいたのか。
「俺は月子の弁当屋で豚汁の美味さを知ってから、汁物にハマっている。だから自販機では、もっぱらスープ系だ。しかもこれはコーン粒がたっぷり入っていてなかなか食感がいい。……そうだ! 月子も飲んでみるといい!?」
「明彦さん、待って下さい」
私は、腰を浮かせかけた明彦さんの腕を慌てて取り、購入に待ったを掛ける。
「とても一本は飲み切れませんから、一口で十分です。あ、よかったら私のアイスと交換しましょう!? これもチョコレートの食感がパリパリで、とっても美味しいですよ?」
「交換?」
「はい」
明彦さんの声が僅かに上擦っているような気がしたけれど、私はいつも三つ子や葉月と交換する時と同じように、食べかけのアイスバーの持ち手側を明彦さんに向けて差し出した。
「落とさないように、ここ、ちゃんと持ってくださいね?」
「うむ!」
やけに気合の入った返事と共に、明彦さんがしっかりと持ち手を取ったのを確認して、私は代わりに明彦さんのコーンスープを受け取る。
「それじゃ、代わりにコーンスープをいただきますね」
「う、うむ」
私はさっそく、弟達と交換する時と同じように、受け取ったコーンスープを吸い口から飲んだ。
そんな私を、明彦さんが横から、とても強い眼差しで見つめていた。
「あ、本当ですね。コーンがたっぷりで美味しいです!」
「そうか」
明彦さんも、神妙な面持ちで手にしたアイスバーにゆっくりと噛り付く。
ふふっ。そんなに警戒しなくても、とっても美味しいのに。
私は微笑ましい思いで明彦さんを見つめていた。
「……まるで蕩けるようだな」
明彦さんは長く口内で味わった後で、感嘆したように呟いた。
「はい。本当に、チョコもアイスも口どけがよくって」
私の相槌に、明彦さんは曖昧に微笑んだ。
そうして私と明彦さんは、途中でもう一度スープとアイスを交換して完食した。
「美味しかったですね」
「あぁ、美味かった」
ノー残業デーの今日は、終業時刻を過ぎて休憩室を利用する社員がいない。
広いブースは、ずっと私と明彦さんの二人きりだ。美味しいアイスとスープを手に明彦さんと肩を寄せ合っていれば、ここが退勤後の社内である事を忘れてしまいそうだ。
それくらい、私と明彦さんの間には穏やかな時間が流れていた。