星屑が消えた日



「あれ、西高ってネクタイしなきゃダメだよね?」


「あ、そうそう!
僕ネクタイ結べないから毎朝飛鳥に結んでもらおうと思って!」

ズボンのポケットに手を突っ込んだ春馬は少し皺の寄ったネクタイを私の手に乗せた。


「ねえ早く早く」


ちょこんと首を前に出しせがんでくる彼はどこのアイドルにも負けない可愛らしさを誇っていた。

伏せられたまつげはお人形のように長く、ふわふわと触り心地の良さそうな黒髪には赤のメッシュが一本入っている。


私にもお揃いでオレンジのメッシュが3.4本入れられている。



“離れていかない”

その誓いとして中学生のときお互いにメッシュとそれとピアスを開けたのだ。

「はい、できたよ」


春馬はふわりと嬉しそうに微笑んだ。

あの私達が誓い合った日と同じような笑顔で。


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