片想いの終わりは、キミと聖なる夜に。
「……そうですか」


分かってたはずなのに。
今日で最後だって、そう覚悟してきたはずだったのに。


いざ、本当に終わりなんだって思ったら、じわりと涙が滲んでいく。せめて最後は潔くありたいのに。


泣くな、彩乃。
こんな時こそ、笑ってやれ。


「彩乃?」

「……っ、滅多に名前で呼んでくれないくせに。こんな時ばっかり……」

「……は?お前、泣いてんの?」

「泣いてません!ちょっと冷たい空気で眼球が冷えすぎただけです」

「どんな現象だよそれ」

「先輩もあるでしょ?たまに、ほら……眼球めっちゃ冷たい!なに?うわ、泣いてる……みたいなとき!」

「いや、ねぇけど」


あー、もう!うるさい。こんな時だってのに、冷静なツッコミとかいらないですから。


「もう、帰ります。今日はありがとうございました。先輩と観る電球は宇宙一綺麗でした!宇宙、行ったことないけど。……あの、じゃあ!これで」


「は?……ちょ、彩乃?」


ダメだ、限界。
もう、涙で視界がボヤけてる。

終わりだ、終わり。
先輩への片想いはたった今、終わったんだ。


急いで先輩に背を向けて、イルミネーションの中を走る。速く、もっと速く……


少しでも先輩から遠いところに行きたい。


……そう、思った瞬間。


───グイッ


!?


「バッカ、なに……勝手に、終わらせてんだよ」


息を切らしたたける先輩の声が、すぐ耳元から聞こえる。


ふわりと香る、大好きな香り。
たける先輩の、温もり。
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