恋する24時 2
うんそう、こんな感じ……。
先輩の胸につけた
耳元から聞こえてくる
ゆっくりな心臓の音。
クーラーでひんやりとした室内で
ひっついた所が暖かい。
『あったかいね~、ねぇちゃん』
『うん、春希もっとこっちおいで?』
冷たいほっぺたをくっつけて
温め合った記憶。
あんまり裕福じゃない家だったけど
家族の仲は良くて
毎日楽しかったな……。
「……」
「……?」
あ、れ?
遠くで、先輩の声が聞こえる?
「……」
あぁ、アタシ
眠れたみたいだ…――
その日は、久しぶりに夢を見た。
大好きな家族と
ぼろい我が家で
笑ってご飯を食べている
家族団欒の時間の
小学生くらいの頃の
まだ何も知らなくて一番幸せだった
泣きそうに幸せだった、頃の夢。
公園で襲われたあの日から
初めて、フラッシュバックがない
夜だった。