前略、さよなら
僕は前の千代の方が好きだと思った。
喧嘩したことを忘れたように
馴れ馴れしく話しかけてきた
千代に少しむかついた。
でもそう思いつつも
また話しかけられたことに
喜びを感じた自分もいた。
よくわからない矛盾した感情が
胸の奥をぐるぐる巡った。
千代は片目をつぶったまま
勢いよくジャンプシュートを放った。
結わえた髪の毛が大きく揺れ
スカートがはためく。
やや低い軌道でゴールへ向かった
ボールはリングに嫌われ
大きく弾んで千代の下へ戻った。
「あー、もう。
せめてもうちょっと低くしてくれたらなあ」
思わず僕は笑った。