前略、さよなら

そんな千代のお父さんに
声をかけることなく

駆けつけた警察官は
深呼吸してから
僕に真剣な顔を向けた。


「陽くん」

「はい」

「君はラクガキしてしまったから

それを消すためのお金が必要になる。


そのお金は君の両親からもらうんだ。

両親が悲しむから
もうこんなことはしないように」

「すみません・・・・・・」

「でも、君はヒーローだ。

1人の少女を救った英雄だ。


私からも君には感謝する」

頭をふさふさをなでられた。


そして千代のお母さんも
僕に向けて言った。


「ありがとう。

本当に、ありがとう」


心の底から吐き出すような声だった。

大人の人にこんな風にお礼を
言われたのは初めてだ。
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