前略、さよなら

千代がそれを見て
お腹を抱えて笑ったので

僕もつられて大笑いした。


走りながら思い切り笑うと
息を吸うのを忘れて苦しくなる。


でも足はぐるぐる回って止まらなかった。




テトラポッドにぶつかった波が
水しぶきになって空気の中で光る。

日差しがコンクリートを焼いて
遠くの景色をゆらゆらさせる。


ひぐらしの鳴き声に混ざって
僕らの笑い声が町へと広がった。


そこらじゅうに
夏がぱんぱんに満ちていた。

< 17 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop