前略、さよなら
僕たちは最後の石段を登り終えた。
「ふう。あっちーなあ」
「暑いね」
小さい山の真ん中にある時旅神社は
町よりも少しだけ太陽に近い。
ぼんやりと熱を持った木の柵の向こうから
しょっぱいにおいが広がった。
ここから見える海は凪いでいるが
近くへ行けば水面がくしゃくしゃにした
アルミホイルのようにデコボコなのを
僕は知っている。
海と空の境界線をじっと見つめると
吸い込まれそうになった。
「あ、あぶないっ」
千代が僕の腰に抱きついた。
自分がものすごく前傾になっていたことに気づく。
「ご、ごめん」
暑さなのか、それとも別の何かなのか
僕はボンッと顔が急に熱くなる。