前略、さよなら
僕の視線を感じたみたいに
千代がくるりと顔を向けた。
「陽、ありがとう」
唐突に言った。
あ、やばい。
その顔は、反則。
いつもの千代の優しい笑顔。
えくぼが現れる可愛い笑顔。
でもなぜか
いつもよりドキドキする顔。
ひゅっと息が止まる。
何か言いそうになったのに
口いっぱいのご飯の塊を
飲み下そうとするみたいに
それは喉に詰まってしまった。
喉に詰まるくらい
大きな言葉ってなんだろう。