僕は彼女の名前をまだ知らない
「うぅ………うっうぅ……………」


彼女が…泣いていた。

右手で左手を包むようにして、体を丸めて泣いていた。
まるで、自分の大切なものを失ったように。
ここにあるもの全てが、この世にあるもの全てが、怖くなったかのように…




なんだか、見てはいけないような気がした。

僕はそっと目を閉じる。
だけど僕の意識は、ここにあるまま、飛んで行くことは無かった。
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