僕は彼女の名前をまだ知らない
今日のお母さんはルンルンなようで、やけによく喋る。


「このドーナツ、雑誌でも紹介されてる人気のお店ので。」

「わあ見て。中にチョコレート。」

「今日のお客さんはすごいお金持ちの人だった。部屋にシャンデリアがあってね…」





軽く聞き流しながら、ドーナツを食べていた僕の耳に、突然、静かな声が降ってきた。


「寛輝、何悩んでんの。」
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