僕は彼女の名前をまだ知らない
お母さんはモンブランを食べる僕を、なぜかまじまじと見ていた。

「お母さん、なんで僕のこと見てるの?」
「ねぇあんた。これなんで買ったの?」
急に聞いてきたお母さんの目は、なぜか怪しげに光っていた。 

「...えと......
秋っぽいこと...したくなったから...?」
「なんで、今夏なのに。」

僕が彼女に聞いたことを、そっくりそのままお母さんに聞かれて驚いた。

改めて、なんと答えるべきか迷う。
そして、やっぱり答えはこれしかないのだと思う。

「なん...となく?」

「へー、なんとなくかー。
ふーん、なんとなくねー。」

そう言って、お母さんはニヤニヤ、いやニタニタと、僕のほうを見ていた。
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