もう一度、君の手にくちづけを。
第1話 はじまりの話
*出会いはここから
クリスマス。
ライトアップされた大きなツリーが、通りのど真ん中で僕を待ち構えていた。
2018年12月24日━━今日は恋人たちが多い。
僕はツリーの真下まで歩いてきた。
12月末の寒さは中々なもので、紺のチェスターコートにグレーのマフラーだけだと少し頼りなかった。
……手袋、してくればよかった。
はあ、と息を吐き手をあたためる。
僕がここにいる理由はもう既に無くなってしまったものの、このまま一人で帰るのも何か違う気がしてこんなに人が多いところに来てしまった。
彼女━━紗和(さわ)からさっき、電話でフラれたから、もう誰かを待つ必要はないのに。
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