もう一度、君の手にくちづけを。
そんなことをうつむいたまま考えていた。
「あのー……」
僕の爪先の先に、茶色いブーツの爪先が向かい合った。
「え?」
顔を上げてみる。
茶色いブーツの女の子が立っていた。
白いコートに、ふわふわの茶髪の女の子。
ピンクのチェックのマフラーに顔をうずめて、白い息をもらす女の子。
可愛い。
けど、知らない。誰かわからない。
「えと………どなた、ですか?」
分からないので失礼だが聞いてみた。
「あ、えと、成川由依(なりかわ ゆい)と申します」
「なり……かわ……さん」