もう一度、君の手にくちづけを。
記憶のなかに、そんな名前の可愛い女の子はいなかった。
てことは、初対面?
「いきなり話しかけてしまい、すみません。あなたのお名前、伺ってもよろしいですか?」
「あ、はい」
かしこまって聞かれたので、つい姿勢を正してしまう。
「藤谷賢一郎(ふじたに けんいちろう)です」
「賢一郎さん……ですね。よろしくお願いします」
いきなり名前呼び!?
成川さん?は手を差し出してきた。
「あ、どうも……よろしくお願いします……」
おずおずとその手を握る。
ん?待てよ何の握手だ?
頭の中にはてなが浮かんで仕方ない。
「えと……成川さん」
「由依でいいですよ」