もう一度、君の手にくちづけを。
「えと……じゃあ由依、さん」
「はい、なんでしょう?」
「この握手は……あと僕に何か用でもあったんですか?」
僕はついつい聞いてしまった。
こういうのははっきりさせないと気がすまないタイプだ。
「ああ……すみません」
そう言ってぱっと手を離した。
「ツリーの真下に一人でいらっしゃったので、つい話しかけてしまいました」
え……同情で話しかけられたってこと?
それともそんなに悪目立ちしていたのか?
確かにクリスマスイブに一人でいたらアウェーかも……。
考えつめてしまった僕に、由依さんが言葉を続ける。
「この後、なにかご予定などありますか?」
「いえ、特には………あ」
そこでふと、予約していたレストランを思い付く。
「キャンセルしないと」
「あ、何かご予定があったんですね」
「いや、もう、行く理由もないので。ディナーなんですけど」
「まあ、ディナー!それでは、彼女さんと?」
「あ、いや、彼女はいません、さっき別れを切り出されて」
「……そうだったんですね。ごめんなさい、言いにくいことを言わせてしまって」