True Heart
「いえ、退屈なんてそんな…」

私は手を横に振って否定をしたけれど、
「ここへきた時から君はずっと浮かない顔をしている」

彼に言い返されてしまった。

声優かと疑いたくなるくらいのテナーボイスに、自分の心臓がドキッ…と鳴ったのがわかった。

「よ、よく見てますね…」

私がそう言ったら、
「周りが意気込んでいる中で1人だけ浮かない顔をしているのは珍しいと思ったからな」

彼は言った。

「あ、アハハ…」

私はもうどう返せばいいのかわからなかった。

ああ、もう本当にゆかりのせいだ!

ゆかりがこんなくだらないことに巻き込んだから悪いんだ!

何が“お姉ちゃんのためを思って”だ!

「名前はなんて言うんだ?」

彼が聞いてきた。
< 16 / 78 >

この作品をシェア

pagetop