しあわせ食堂の異世界ご飯3
「いや、わかってくれたらいいよ。ありがとう」
 どうやらひとりの犠牲で丸く収まったようだ。
(美味しいものを美味しく感じられる辛さで食べるのが一番いいんだよ)
 アリアはエマと一緒にほっとして笑う。
 これで、しあわせ食堂で馬鹿なやり取りをする人はいなくなるだろう。
「それじゃあ、ごゆっくりお食事を楽しんでください」
「はい、ありがとうございます」
 アリアは食べられることのなかった激辛カレーをトレイに載せて下げようとしたのだが、店内のほかの客から「待った!」という声があがった。
「俺も、それを食べてみたいんだ……! ハバロのカレーなんて、今を逃したら一生味わえないだろうし」
 その申し出に、ほかの客が「まじかよ」とざわめく。
 今のお客さんが食べたのを見たら、大抵の人間が食べるのを躊躇するだろう。しかし自分なら食べられるかもしれないという不思議な自信と好奇心が勝ってしまった。
 アリアはきょとんと目を瞬かせながら、くすりと笑う。
「もちろんいいですよ」
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