しあわせ食堂の異世界ご飯3

 さて、リズも笑顔になったから父親を捜そう――そう思ったアリアたちだったが、周囲に人がわっと集まってきた。その数は、十人弱といったところだろうか。
「え、何!?」
 突然のことに慌てるアリアを見て、カミルが笑う。
「そりゃあ、わたあめ、なんて不思議なものを見たら誰だって気になるよ」
 つい先ほどまではリントたちと話をしていたため、話しかけてこなかったのだろうとカミルが言う。
 しかし残念なことに、わたあめの現物はもうないし今は作れない。アリアが申し訳なさそうにすると、集まった人たちが声をかけてきた。
「さっきのは食べ物だったの?」
「初めてみたぞ、簡単に作ることができるのか?」
「私も食べたい!」
「嘘、もうないの!?」
 とても気になっていたのにと、女の子が肩を落とす。
 ほかの人たちも食べられないことを知り、がっかりしている。
(もっと簡単に作れたらいいんだけどなぁ……)
 いかんせん材料よりも道具の準備が大変なのだ。
 リントのように簡単に魔法を使えればいいのだけれど、そんな風に魔法を使えたら市場で店なんて開いてはいないだろう。
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