しあわせ食堂の異世界ご飯3
翌日、リベルトとローレンツが向かったのは話していた通り港町。暮らしている首都ジェーロからは、馬で駆けて三十分ほどの場所にある。
 小さな町だが漁師たちが多く住んでいるため活気があり、いつ来ても賑やかなところだ。本来であれば地面が砂に覆われているのだが、冬のため霜が降りところどころで雪が積もっている。

 リベルトとローレンツがまず向かったのは、この港を仕切っている漁師組合の組合長のところだ。町に住む漁師たちや、魚の収穫量などを把握している。
 海に近いところに作られた組合は、広い面積を有して魚の売買などもできるようになっており、珊瑚で装飾された屋根が目印だ。
 組合長へは昨夜のうちに早馬を手配していたので、リベルトの訪問を組合の前で待っていた。
「ようこそおいでくださいました、リベルト陛下。外は寒いですから、どうぞ中へ」
「ああ。配慮いただき感謝する」
「とんでもございません!」
 漁師長はもう七十歳になろうというのに、がっしりとした肉体だった。若い頃から漁師として働いていた者たちは、健康であることも自慢のひとつだ。
 組合の応接室に通され、リベルトは羽織っていた外套をローレンツに渡し席へついた。
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