しあわせ食堂の異世界ご飯3
「ネギとノリはわかるが……この赤いのは? 匂いは梅に似ている気がする」
「そうです。これは梅干しですよ。カリカリ梅ではないんですけど、美味しいのでしらすと一緒に食べてみてください」
「わかった」
 今日は梅を食べられるとは思っていなかったので、リントは内心で嬉しく思う。スプーンでご飯、しらす、ネギ、ノリ、梅干しをすくって口に含む。
 まず主張してきたのは梅干しの酸味だ。
 以前に食べたカリカリ梅とはまったく違って、柔らかい感触に思わず目を見開く。そのすっぱさには、ぎゅっと目を閉じたくなるほど。ゆっくり噛みしめると、次に感じるのはしらすの食感だ。
 柔らかすぎず、適度な弾力がちょうどいい。さらにご飯に染み込んだ醤油と、梅干しの酸味がしらすの旨味をより一層引き出してくれている。
 もっと食べたいという欲が湧き上がって、手がどんどんしらす丼を口の中へかきこんでいく。
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