しあわせ食堂の異世界ご飯3
リズは何度も頷いて、「パパ……」と小さな声で呟いた。どうやら父親と一緒に市場へ来たが、はぐれてしまったようだ。
「父ちゃんとはぐれたのか」
 迷子の少女であるということが確定した。
 向こうも捜しているだろうなと思い、カミルが周囲を見回してみる。けれどそれらしい男性は見当たらないので、この近くにはいないのかもしれない。
「ん~、どこにいるんだろうな」
 ここは市場で人も多いとはいえ、全員で捜せばきっとすぐに見つかるだろう。
「なら、私たちが一緒にパパを探してあげる。だから元気を出して? ね?」
 アリアが優しく微笑むと、リズは逆に安心してしまったのか「わあぁぁん」と泣き出してしまった。
「あわわわっ! どうしよう、シャルル、カミル!」
「わ、私も子供の扱いはそんなに得意じゃないですよ!?」
「俺だってひとりっ子だぞ!」
 どうやら誰も役には立たないらしい。
 しかし泣いているのだから、ひとまず落ち着かせなければ。そう思ったアリアは、なだめるようにしながらリズを抱き上げた。
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