剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
次の日、セシリアとルディガーは予定を変更し、ふたりでドリスの元を訪れるための時間を作った。
ふたりとも私服で、ルディガーは白いシャツにオリーブ色のダブレット、下は黒いズボンとロングブーツを合わせている。
セシリアは胸元が編み上げ式になっているくすんだワインレッドのワンピースを着用し、曇天で肌寒さもあるので外套も忘れない。
ドュンケルの森でディアナの遺体が見つかり、昨日の今日で彼女の父親がウリエル区の権力者でもあることから街は、特にウリエル区に入ると辺りはあらゆる噂で持ちきりだった。
ましてや今回ははっきりと彼女の死は人為的なものであり、不可解な点も多いのだから妙な憶測もあれこれ飛ぶ。
「可哀相に、あんな森で。髪を切られたりして脅されたらしいわよ」
「ディアナではなく父親に恨みのある奴の仕業じゃないか?」
こうした道行く市民たちの話に耳を傾け、セシリアはそれとなくルディガーに身を寄せて、噂話でもする態で小声で囁いた。
「いいですか。もう一度確認しますが私は夜警団に所属していることも、あなたの副官である事実も彼女たちには伏せています。なので、今回はあくまでも幼い頃からの繋がりであなたに声をかけたという話でお願いしますね」
真面目な顔で念押しするセシリアに、ルディガーは苦笑する。
ふたりとも私服で、ルディガーは白いシャツにオリーブ色のダブレット、下は黒いズボンとロングブーツを合わせている。
セシリアは胸元が編み上げ式になっているくすんだワインレッドのワンピースを着用し、曇天で肌寒さもあるので外套も忘れない。
ドュンケルの森でディアナの遺体が見つかり、昨日の今日で彼女の父親がウリエル区の権力者でもあることから街は、特にウリエル区に入ると辺りはあらゆる噂で持ちきりだった。
ましてや今回ははっきりと彼女の死は人為的なものであり、不可解な点も多いのだから妙な憶測もあれこれ飛ぶ。
「可哀相に、あんな森で。髪を切られたりして脅されたらしいわよ」
「ディアナではなく父親に恨みのある奴の仕業じゃないか?」
こうした道行く市民たちの話に耳を傾け、セシリアはそれとなくルディガーに身を寄せて、噂話でもする態で小声で囁いた。
「いいですか。もう一度確認しますが私は夜警団に所属していることも、あなたの副官である事実も彼女たちには伏せています。なので、今回はあくまでも幼い頃からの繋がりであなたに声をかけたという話でお願いしますね」
真面目な顔で念押しするセシリアに、ルディガーは苦笑する。