剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
「やっぱり気づいていた?」

 ルディガーの反応で自分の中の予想を確信に変える。

 ライラが部屋を尋ねて来たときからセシリアはライラが自分の意志だけでお茶に誘ってきたのではないと考えていた。

 この時間にセシリアがここにいるのは、かなり稀な状況なのにも関わらず、ライラは自分を探した素振りを見せなかった。

 仮にセシリアの自室を訪ねた後でこちらに足を運んだのだとしても、この部屋はルディガーの仕事部屋だ。

 ライラならルディガーのお茶も念のために用意しそうだが、カップに余分はなかった。最初からライラはセシリアがひとりでここにいると知っていたからだ。

 それにライラはセシリアがお茶を飲むのをかなり心配そうに見守っていた。そこでなんとなく彼女の目論見に気づき、セシリアは失礼を承知で一口でお茶を止めておいたのだ。

 やはり、すべては上官が裏で手を引いていたらしい。セシリアは真面目な顔で自分に覆いかぶさったままのルディガーに告げる。さっきの彼の台詞を拝借して。

「私だって傍であなたをずっと見てきましたから」

「お、その殺し文句いいね」

「ふざけないでください!」

 冗談交じりに返され、セシリアはついに感情を露わにした。そして不意に焦点がブレ、目を瞬かせる。
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