剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
「半年前、あなたが所見したクレア・ヴァッサーは定かではありませんが、少なくともその後、ドュンケルの森の入口付近で発見されたカルラ・ヴィントとレギーナ・ルフト、そしてホフマン卿の令嬢ディアナの死にはあなたが関係しているのでしょう」

 テレサは怒るどころか、顔には笑みを忍ばせたままだ。

「私が彼女たちをドュンケルの森で殺めたとでも?」

「いいえ。彼女たちはここで亡くなったんです。その後、わざわざドュンケルの森の入口付近に運ばれた」

 セシリアの物言いは断定的だった。テレサはわずかに肩をすくめる。

「どうしてそんな面倒なことを? そもそも彼女たちをここに連れて来るのだって……」

「連れて来ていません。彼女たちは自分の意志でここに来たんですから」

 テレサの言葉を遮りセシリアははっきりと告げる。

「そして亡くなった後、荷車に載せられ、あなたの手で運ばれた」

「なるほど。私は荷車を持っているし、あそこらへんで引いていても誰も不審に思わないでしょう。でもそれこそ本末転倒よ。いくら私が年齢の割に元気で筋力があっても、大人の女性一人、あの古い車輪が耐えられるか……」

「ええ。だから私もあなたではないと一度考えを否定しました」

 説明は不要だと言わんばかりにセシリアは言葉をかぶせた。そしてひと呼吸忍ばせて続ける。
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